【ブリーチングとは】神経をとった歯の変色を改善
神経を取ってしまった歯は、経年的に変色を起こし、くすんだような色になってきてしまいます。
そういった歯をセラミックなどに変えて白さを取り戻すことも可能なのですが、その前に適応にならないか検討してほしいものがあります。
それがブリーチングです。
セラミックは歯を全周に渡って削る必要があり、歯質の喪失量が非常に大きくなってしまいます。
そこで上記のように多くの歯質が残っている場合にはブリーチングを行い、直接修復で終わらせてあげるというのも非常に有効な手段となります。
【なんで神経をとった歯は変色してしまうのか。】変色の原因と適応症
根管治療後の変色の原因は以下のようなものがあります。
これらの原因のうち、ブリーチングの適応になってくるのは、右側にあげた原因により変色した歯になります。
左側に含まれる、メタルポストやスクリューポストなどの金属イオンの溶出による着色には効果がほぼありません。またテトラサイクリン歯なども重度の場合は、ホワイトニング、ブリーチングとも効果は出にくいと言われています。
【ブリーチングのレシピ】どんな組み合わせで行うか。
ブリーチングもホワイトニングと同様に、ヒドロキシラジカルをはじめとした活性酸素によって着色物質を分解し漂白効果を示します。
使用される薬剤の代表的なものに、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、過酸化尿素などがあげられます。
それらの種類、組み合わせは以下の通り。
結論から言うと、過ホウ酸ナトリウム+精製水で行うのが現状一番良いのかなと思っています。
その理由を見ていきます。
【漂白効果が一番高いのはどの組み合わせ?】
さまざまな研究を見ていくと、最も漂白効果が強いのは過ホウ酸ナトリウム+過酸化水素(過酸化尿素)の組み合わせが最も漂白効果が高いと言えそうです。
過ホウ酸ナトリウム+精製水との有意差はないとする論文もありますが、総じてこの組み合わせは漂白効果に関しては劣るという感じになっているようです。
【注意① 歯根の外部吸収】薬剤によって発生率が変わりそう
ブリーチングをする上で最も気をつけないといけないのは歯根の外部吸収です。
漂白剤からの水素イオンの拡散が、破骨細胞活性と骨吸収に最適な酸性環境を提供し、時間の経過とともに歯頸部の歯根吸収を引き起こすと推測されています。
よってこの現象を予防するためには、水素イオンの拡散が少ない方がいいわけです。
この比較で言うと、過ホウ酸ナトリウム+蒸留水と過炭酸ナトリウム+蒸留水の組み合わせが最も漏出量が少なく、30%過酸化水素単身の使用が最も漏出量が多いという結果になってます。
これは他の論文においても言及されており、過酸化水素を用いた場合に漏出量が多い傾向にあるようです。
【注意② ブリーチング後の歯質接着性の低下】ブリーチング後どれくらい期間を空けるか。
ホワイトニング歯の接着修復でも言われていることなので、ご存知の方も多いと思いますが、ブリーチングにおいても同様のことが言えます。
これはどちらも活性酸素によって接着阻害が起きるとされています。
では薬剤を除去した後に接着修復を行う場合にはどれくらいの期間を開ければいいのでしょうか。
この結果を見ると、エナメル質は元通りになるまで2週間、象牙質は1週間で良さそうです。
他の論文においても象牙質接着は1週間空ければ元通りという結果があります。
よって、薬剤除去直後の接着修復には注意が必要なことがわかります。
これらの結果より、ブリーチングの効果が得られたのちは、薬剤を除去し、二週間間空けて接着修復を行うようにしています。
【注意③:薬剤の交換頻度は?】
ブリーチングの場合は、2週間ごとに御来院してもらい、その度に薬剤の交換をしていました。
色調の変化を確認することは重要ですが、薬剤の交換もする必要があるのでしょうか。論文的に見ていきます。
この論文を見ると、27時間後に濃度のピークを迎え、3日後には減少が始まり、その後は一定の濃度を辿るという挙動を示しています。
ここだけ見ると一週間以内に薬剤の交換をする必要があるように思われますが、3日後以降の比較的低い濃度であってもブリーチングの効果は継続することから、この効果は一ヶ月弱持続すると考えられそうです。
よってこの結果を踏まえると薬剤の頻回な交換はする必要がなく、経過観察時には色調変化の確認と、仮封が取れていないかなどの確認のみで大丈夫そうです。
【ブリーチング後の後戻りは?】
後戻りの原因ははっきりと解明はされていませんが、漂白後の時間経過とともに戻ってくる傾向はあるようです。
ある論文では、
研究によって異なるが、2年後の再発率は10%、5年後は25%、8年後は49%と報告されている。
Friedman S: Internal bleaching: long-term outcomes and complications. J Am Dent Assoc 128: 26S–30S (1997)
という報告があります。しかし、この研究は比較的古く、漂白処置中の細菌管理が十分に行われていないことや、その後の修復の大部分が接着技術を用いずに行われたことなどが問題点として挙げられます。
よって現代の接着技術を用い、処置後の再感染に対する配慮をきちんと行うことで、後戻りのスピードをある程度抑えられるかもしれません。
【最後に】補綴修復前にもブリーチングの適応を考えよう
ここまでブリーチングについて見てきましたが、個人的には天然歯に対するブリーチングはもちろんのこと、補綴処置前にもブリーチングの適応をすることが多いです。
ブリーチングを行うことで、補綴直下の歯茎の色の改善も見込めます。
歯根の色が暗いと、その色が歯茎に反映され、紫色のような歯肉の色になってしまいます。
ブリーチングを行うことで、健康的な歯肉の色になり、特にハイリップの患者さんにおいてより審美的な結果を得ることができます。
ブリーチングを有効に活用してより審美的な治療を患者さんに提供していきましょう。
今日も最後までご覧いただきありがとうございました!
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