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今回は下顎大臼歯編になります。
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【これだけは覚えておこう】下顎第一大臼歯の基本系

図1:下顎右側第一大臼歯の咬合面観
咬合面から見たところ
下顎においても上顎と同様に、第一大臼歯を基本形としているので、その形態から見ていこうと思います。
下顎大臼歯は五咬頭性であり、頬側に3個、舌側に2個の咬頭を備えているのが基本形となります。
上顎大臼歯では舌側咬頭よりも頬側咬頭の方がいくらか尖鋭でしたが、下顎大臼歯ではこの関係が正反対で頬側咬頭がより鈍円な形をしています。
横から見たところ
各咬頭の問には咬合面から続いた溝があり、これが頬側面にまで伸びてきています。これを頬側面溝および遠心頬側面溝といいます。 このうち頬側面溝の方が発達がよく、さらに頬側面歯頸部には歯帯が発育しています。
歯頸部はさらにエナメル質が突起状になり、時には根間突起として根分岐部の中へ深く侵入していることもあります。
舌側面の形も頬側面に似てほぼ梯形ですが、頬側面よりも高さで優り幅でやや劣っています。
尖端は頬側咬頭よりも鋭いから、咬合縁の形はM形を呈しています。咬頭の大きさはほとんど同じですが、よく注意すると、近心のものがやや幅が狭くて高く、遠心のものは逆に幅が広くて低くなっています。
舌側面溝は舌側面の中央よりはやや近心に偏っていますが、これは上述のように舌側の両咬頭の大きさの差によるものです。
近心面は比較的平坦で、歯頸側に行くに従ってわずかに歯の中軸に向かって傾いていますが、遠心面はかなり強く膨隆して、中軸に対する傾斜も著しいです。
まず頬側の輪郭を歯頸部から咬合縁に向かってたどっていくと、初めは根の輪郭の延長として少し頬側に傾いていますが、歯冠の歯頸側約1/3の辺りで急に舌側の方へ折れ曲がっています。(図2:M)
本来の固有咬合面は各咬頭の尖端を順次に連ねた隆線すなわち咬合縁で取り囲まれた部分だけであって、盆地のように凹んでいます。
溝と横溝との交わる様式は必ずしも正十字形とは決まっておらず、これに種々の変異形が認められます。
この咬頭配列にヒトの下顎大臼歯の退化過程の順序を考え合わせて、これをDryopithecuspatterm(ドリオピテクス型)とplus pattern(十字型)とに大別しています。
これはかなり細かい話になるので割愛しますが、要するに裂溝の形態は本当に色々あるっていうことです。
各咬頭に中心隆線その両側の近心および遠心の副隆線があること、および上に述べた咬合面の溝の多くは深くエナメル質内に切れ込んで裂溝をなしていることは上顎の大臼歯におけるものと同じになります。

図2:下顎右側大臼歯それぞれの角度から見たところ
【上顎と同じ傾向】下顎大臼歯の形態の推移

図3:下顎左側大臼歯群の変化
続いて、下顎第一大臼歯の形態を基本形として、後方に行くにつれてどのように変化していくかを見ていきます。
基本的には上顎の場合と同じような変化を辿っていきます。
①大きさは後方の歯牙ほど小さくなります。ただしこれは絶対的なものではなく、個々によって異なり、大きさが逆の関係になっているものもたくさんあるようです。またその縮小率は上顎より小さくなります。
また、その変化は第一大臼歯から第二大臼歯へは幅(横方向)の縮小が優り、第二大臼歯から第三大臼歯に向かって厚さ(縦方向)の縮小が進行するという傾向があります。よって、第一大臼歯を純粋に小さくしたような形態は第三大臼歯に認められることが多いです。
②咬頭数が減少します。 咬頭のうち、遠心咬頭が消失する傾向があります。 こうして四咬頭性になると、歯冠の咬合面観は矩形に近くなっていきます。
③歯冠では第二大臼歯 ・第三大臼歯へと向かうに従って舌側咬頭が次第に咬合面の中心に向かって集まるように傾いています。(図3)
歯冠を隣接面の方から見ると、頬側の輪郭は各大臼歯ともあまり変わりはないですが、舌側の輪郭は後方の歯ほど咬合縁の近くでかなり強く頬側に向かって湾曲しています。
④第一大臼歯では頬側咬頭よりも舌側咬頭の方が高いので、頬舌側咬頭の尖端を結ぶ直線は頬側に向かって歯頸の方へ傾斜していますが、第二大臼歯ではこの傾斜が小さく、第三大臼歯ではほとんど水平に近くなっています。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。