皆様こんにちは。
な、な、なんと!!この記事に対してひろゆきさんから直接リプをいただきました!
「勉強になりましたー。」なんて嬉しいお言葉をいただきました。
では早速本題に移りましょう!!
ちょっと前の動画になりますが、以下の動画をご覧になりましたでしょうか?
何かと話題のひろゆき氏をコメンテーターに迎えて放送されたABEMA Primeです。
この番組、地上波では流せないような議論が結構あったりして、めちゃくちゃ面白いですよね。個人的に大好きな番組です。
最近、岸田内閣基本方針として示された骨太の方針に伴い、歯科においては”国民皆歯科検診の具体的な検討”という一文が組み込まれました。
一部では増えすぎた歯科医師の救済処置だという声もあるみたいですけど、なぜこの方針が組み込まれたのかをABEMAの報道にも触れながら、僕が知る限りの論文ベースで解説できればと思います。
【ABEMA報道の内容】こんな流れで放送されてました。
フルで見ると大体こんな感じで進んでいきます。
【歯科医師・歯科医院が多い】本当に歯科医院、歯科医師は多いのか。
コンビニよりもその数が多いと言われて久しい歯科医院。
確かに多いなって肌感覚であるんですけど、本当に多いのか。他国の状況を比較対象として見ていきましょう。
統計の取り方で違いがあるみたいなんですけど、一次情報にはアクセスできなかったので、ここくらいで勘弁してください。
データの出どころも不明な点が多いので断言はできないですが、他国と比較してそこまで極端に多いという話ではないみたいです。
日本において歯科医院は大体7万件ありますが、美容院に至っては25万件もあるし、療業と言われる整骨院みたいなものだって合わせると14万件近くあるわけです。
先ほどのデータのリンク先の言葉をお借りすると、これらはいずれも労働集約産業なわけなので、どうしても人数は多くなってしまいます。
そして歯科医師の数を考える場合に、注目すべきは歯科医師の男女の内訳です。
だいぶ前のデータですが、2年ごとに行われる実態調査において、徐々に女性歯科医師の割合が増えてきていることがわかります。
そして最近の歯学部の学生の男女比を見てみると、、、
となっており、女性歯科医師の数が年々増えていく状況にあります。
歯学部は6年制ですから、ストレートで合格をしても社会に出るのが24歳。そこから研修医をやって、25歳でようやくスタートラインにたてるわけです。
さまざまな障壁があるのが現状で、生涯にわたって歯科医師としてフルタイムでバリバリ働く女性の絶対数はかなり少なくなってきます。
よってデータで見える歯科医師の人数と、実際に働いている歯科医師の人数ではもうすでに剥離があると考えられますし、今後はよりその傾向が強くなっていくのは想像に難くないと思います。
【歯科医師のワーキングプア問題】全国的にはそこまで問題になっていない
詳しいデータは得られなかったため、実態を調べることはできなかったのですが、実際に歯科医師のワーキングプアが問題になっているとは思えません。
また、この問題はあったとしても、ほとんどが都市部に限った話であって、地方を見てみるとそんな状況はあまり当てはまりません。
先程の通り、供給過多問題は実際には無い。もしくはあったとしてもいずれ解決されることで、それに伴いワーキングプア問題も時間と共に解消されていくと思いますし、開業場所によっては大きな問題にはならないのではないかと、個人的には考えています。
【銀歯だとセラミックを入れた場合より寿命が短くなるんですか?】ひろゆき氏の発言から歯科と寿命を考えてみる。
【金銀パラジウム合金の是非】そんなに悪い素材ではない。
動画の12:30くらいのところでサムネにもなっている、ひろゆきさんの「銀歯で治療をした人とセラミックとかインプラントで治療した人の寿命って変わったりするんですか?」の発言が飛び出します。
この会話の中で歯科医師側が盛んに言っていたのが、金属アレルギーの問題です。これについて詳しく見ていきいます。
実際に金属アレルギーに限らず、全般的なアレルギー患者さんは増加傾向にあるようで、以下のような報告が上がっています。
その中でも若年者における発症が多い傾向にあるようです。
では歯科金属に関してはどうでしょうか。徳島大学の歯科用金属アレルギー外来では新患数が男性は横ばいなのに対し、女性は2000年頃から著しく増加していることを報告しています。
東京歯科大学の論文においても具体的な数字は明らかではないですが、患者の増加傾向を報告しており、その年代のピークは60代であるとしています。
歯科金属アレルギー患者の年齢分布は若年者に多いとする報告もあるので、実態はわかりませんが、総数として金属アレルギー患者さんが増えていることは間違いなさそうです。
しかしながら、問題になっている金銀パラジウム合金の使用の是非に関しては、全然使っていいと思っていて、ひろゆきさんの考えに同意します。
審美性や金属アレルギーという問題を除いた場合に、金銀パラジウム合金は非常に優れた機械的特性を持っており、長期的な口腔機能回復という意味では非常に有用です。
歯の形づくりや、型取りなどの行程をしっかり行えば、そんなに悪いものではありません。
実際僕も重度の金属アレルギーをお持ちの患者さんを診させてもらった経験がありますが、頻度としてはかなり少ないです。
コスト、機能、リスクなど、総合的に判断をするべきだと思います。
残念ながら一定数発症してしまう方がいますが、不可逆的な処置ではないし、体内に埋め込むわけでもないので、外せばいいだけの話です。
気になる方は皮膚科などで術前に調べてもらい、その結果に見合った材料で処置を受ければいいと思います。
今保険導入されているCAD/CAM冠は、機能面で悪い素材だと思っているし、あれを入れるなら金パラの方がいいと思っています。
日本でこの薬はダメだけど、海外ならオッケーとか、その逆も然りですが、そんなの例に挙げたら枚挙にいとまがないわけで、海外で禁止だから日本もだめっていう論理で話を進めていくのには無理があるかな。と思います。
よって個人的な結論としては、銀歯とセラミックで寿命に差はない。です。
【セラミックは銀歯より予後がいい?】全くそんなことはない。
動画14分頃にセラミックの方が予後が良くて、その理由として銀歯や接着剤の劣化の早さみたいな話を歯科医師の方がされます。
ちょっとこの部分が疑問で、セラミックの方が明らかに予後がいいというような論文は見たことがありません。
有名なものとして以下のような論文のデータが使われます。
これを見ると結構悪いなという気がしますが、論文をよく見るとこれらのサンプルは1991〜2005年の間に治療を受けた人たちになります。そして失敗と判定された原因の多くは脱離と二次カリエス(治療したところがまた虫歯になること)です。
現在保険診療で主流になっている、合着剤はレジン添加型グラスアイオノマーセメントというもので、1995年に初めて商品化されました。
それ以前に用いられていたのは無機系の合着剤で、これはかなりセメントの劣化が早く進行します。新しい製品は発売から、市場に浸透するまでにある程度の時間がかるので、サンプルのほとんどが劣化のしやすい無機系の合着剤で装着されていたことが予想されます。
イオン化傾向の少ない(=腐食が起きにくい)貴金属である金銀パラジウム合金でも経年的に腐食が起こることはメタルタトゥーの存在などからも容易に想像できますが、耐用年数に影響を与えるほどのインパクトはないと考えられ、接着剤の改良が行われている今ではこの耐用年数はこの結果よりもかなり改善されていると思われます。
ただセラミックの方が予後がよくなる要素は確かにあって、型取りの材料やセラミックの汚れのつきにくさとか材料のことはもちろんなのですが、それよりも予後に大きな影響を与えるのは患者さんの背景だと思っています。
下記の論文に示されているように社会経済的地位とう蝕の有病率に関連があるとされています。
つまり所得が比較的多い人の方が、健康観が高い方が多く、自身のケアに気を使う傾向があるということです。さらに患者教育に対するレスポンスも高い(歯科医師のいうことを理解してくれる)とされています。
よって比較的高価なセラミックを選択する患者さんは、その後のケアに関しても真面目に行ってくれる可能性が高く、健康観も高いため、虫歯の再発を避けることができ、処置の予後自体も長くなっていくことが予想されます。
個人的にこの点が予後に影響を与える因子として最も大きな部分であると考えており、それを示す論文もこの後に紹介していきます。
【骨太の方針:歯科が健康寿命の延伸のためにできることは何か。】国民皆歯科検診の是非を考える
ひろゆき氏は虫歯どうこう関係なく歯は無くなっていくわけで、80歳になれば歯がほとんど残っていない方がいっぱいなんだから、銀歯だろうがセラミックだろうがどっちでもいいよね。だから寿命っていう観点でみるのが大事。という旨の発言をされます。
寿命と言っても、身体的なことはもちろん、心理的、社会的な側面も大事かと思うので、その辺を含め歯科ができることを考えてみます。
よって、
というふうにここでは無理矢理定義します。
【歯がたくさん残っていることで咀嚼能率は上がり、QOLは上がる】
残存歯数とQOLの関連を示す論文はたくさんあるのですが、以下の論文がよくまとめられているので、この論文をみていきます。
60~85歳の3450名をサンプルに残存(機能)歯数ごとにグループ化し、さまざまな項目を調査、以下のような結果を報告しました。
ということで、以下のように結ばれています。
十分な咬合・咀嚼が回復することによって、唾液分泌量が増加し、栄養摂取も良好となり、味覚も満足でき、楽しい食事が行え、外出していろいろな人達と談笑し、社会生活が活発化し、心身ともに明るく過ごし、QOLの向上とともに平均寿命と健康寿命のさらなる延伸が大いに期待できるものと考えられる。
ということで口腔内環境を維持することがQOLの向上につながるということが言えそうです。
似たようなところですが、以下の論文もみていきます。
【歯が健康な方が医療費が安く済む!(=健康?)】骨太の方針の根拠
以下の論文においてはさまざまな疫学的研究がまとめられています。内容として、①口腔内の健康状態と歯科医療費・医療費の関係について、②歯科保険サービス(企業検診など)の受給状況と、歯科医療費、医療費の関係を調べています。
詳しい内容については上記リンクから見ていただきたいのですが、残存歯が多いほど、歯科医療費や医療費は抑えられる傾向にあるということ、定期検診に定期的に通われている方は総医療費が安い傾向にあるようです。
よって歯の健康は身体だけでなく、精神的な面にも重要な役割を果たしており、健康寿命の延伸に寄与していると言えると思います。
これらと同様の結果を示す論文は他にもあり、これらの疫学的研究の結果が骨太の方針の中の国民皆歯科検診の根拠となっていそうです。
【まとめ】セラミック?銀歯? そんなことより大事なこととは
なかなかマスメディアに取り上げられない歯科の話題ですが、今回大好きなABEMAで取り上げられたので、それに対する感想を論文のデータとともに述べていきました。
サムネに使っている画像の答えとしては、銀歯とセラミックで人の寿命は変わりません。
ただ、このRepeated Restoration Cycleという考え方があって、治療を繰り返せば繰り返すほど、どんどん歯は弱くなり抜歯に近づいてくる。という考え方です。
先述の通り、抜歯に至ってしまうとQOLや健康を害してしまう可能性が高くなり、結果として寿命が短くなるということは言えると思います。
歯を失わないために大事なことは、セラミックか銀歯かという材料の話より、毎日のケアを適切に行うことです。
そして、そのケアがきちんとできているのか、気付かぬところで病気が進行していないか、客観的に見てもらうという意味で定期的な検診を行うことが大事になってきます。
マスコミで歯科に関することが出てくるときは今回みたいにネガティブな報道とセットになることが多いですが、多くの方の目に触れるいい機会でもあるので、正しい情報発信もセットで行い、患者さんの真の理解も深まることを願います。
フルの動画でしか見れないんですが、冒頭でひろゆき氏が、”めちゃめちゃ優秀な歯医者でも、どんなヤブ医者でも値段一緒なんですよね。なんで、めちゃめちゃ優秀な歯医者で治療するとめちゃくちゃ得”っていう真理をついた発言をされていて、本当にこの人は鋭いなーと感心させられました。
みなさんもよかったら動画見てみてください。
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今日も最後までありがとうございました。