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【接着で全てが変わった】セラミック修復の形成
日常的に行われるセラミック修復ですが、皆さんはどのような考えのもとで形成を行なっているでしょうか?
MIや接着技術の向上も相まって、これまで修復物の維持のために必要とされてきた形成デザインが大きく異なってきています。
今日はその形成について見ていきます。
代表的な論文が二つあるので、今回はそのうちの一つを見ていこうと思います。
後半はこちら
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セラミック修復の形成② 【Dr. Marco Venezianiの論文から】
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【今日の論文】Posterior indirect adhesive restorations(PIAR):preparation designs and adhesthetics clinical protocol Dr. Federico Ferraris IJED volume12 number4 winter2017
この論文はイタリアで開業されているFederico Ferraris先生が2017年に発表された論文です。
臼歯部の間接接着修復(Posterior indirect adhesive restorations:PIAR)を扱った論文です。
いわゆるオーバーレイの形成における、歯牙の診査診断、形成の手技などが細かく紹介されています。
題名にあるadhesthetics clinical protocolのadhestheticsはadhesion(接着)とesthetics(審美)を組み合わせた造語みたいです。
【PIARの適応症】
論文で言及されているPAIRの適応症は、以下の4つになります。
・中程度から大規模な虫歯で、1つ以上の咬頭が欠損しているもの。
・複数の手法で修復された歯の予後を改善するために、1つまたは複数の咬頭をカバーすることが望ましい齲蝕歯。
・形態学的修正および/または臼歯部のの咬合高径(OVD)の増加を望む場合で、フルカバーのクラウン修復では侵襲が大きすぎると考えられる場合。
・歯の生活力を維持するために症状を管理する必要がある場合の歯のクラック。
・同一顎内に複数の中程度、または大きな虫歯がある場合(間接インレー修復が第一選択でない場合も含む)。Posterior indirect adhesive restorations(PIAR):preparation designs and adhesthetics clinical protocol Dr. Federico Ferraris IJED volume12 number4 winter2017より引用
残していい咬頭と、残すべきでない咬頭の判断
実際の臨床でも迷う部分だと思いますが、咬頭を残すべきか、形成量を増やしてでも削除すべきか、この判断はどう行えばいいのでしょうか。
この論文内で言及があるのは、
機能咬頭の場合、一番薄い所を測定し、生活歯で2mm、失活歯で3mmの厚みが確保できる場合は保存してよく、
非機能咬頭の場合は、生活、失活に関係なく2mmの厚さを確保する必要があるようです。
また、それぞれの咬頭の壁の間の距離(the central isthmus)は2mm以上にすべきとの言及もあります。
ただし、摩耗が激しかったり、酸蝕歯などでerosionが起きているものはスパッと全体を落とさないといけません。
【ファイバーポストは使わない?】築造に関して
生活歯に関しては、アンダーカットが出ないように通法通り、ビルドアップをすればいいんですけど、問題は失活歯の場合です。
ファイバーポストを併用すべき条件は、フルカバーの症例で、残存歯質がかなり少ない時であり、このPIARに関しては、基本的に歯質が残存している条件下で行われるので、ファイバーを使うことは推奨されていません。
しかし、論文内でもファイバーポストのメリット、デメリットなど様々出ており、完璧な答えが出ているわけではないので、この部分は個人の解釈に合わせて併用してもいいと思います。ファイバーポストが絶対的な禁忌ではない。ということも言及されています。
【バット、ベベル、ショルダー】形成の種類
頬舌的な部分の形成デザインについてです。
これには以下の三種類があります。

同論文より引用
この内最も推奨されるのがバットジョイントです。最も形成量が少なく、接着操作にも一番有利なためです。
写真の通り、咬合面の内斜面と同じような傾斜で形成を行い、フィニッシュラインの部分は水平にして形成を終えます。
次点でベベルになります。これは歯牙と修復物の移行がなだらかになるため、審美的欲求のある部位などに用いられます。よって、舌側に用いられることは少なく、主に唇、頬側に用いられます。
一般的に45°の角度で、1~1.5mmの長さのベベルが付与されます。
最後は(ラウンデッド)ショルダーになります。咬頭の喪失が歯頸部の3分の1程度にまで進行している場合などはこうせざるを得ません。
ショルダーの際のフィニッシュラインの幅は1mm程度を目指します。
【スロット、ベベル、リッジアップ】隣接面の形成デザイン
次に隣接面部の形成デザインです。

同論文より引用
既に修復されている歯牙であったり、カリエスの歯では、隣接面がやられていることが多いので、結果的にスロットになる場合が一番多いかと思います。
これも先ほどと同じく、約1mm幅で、ラウンデッドショルダーで形成します。
次はベベル。これは先ほどのように以前の修復物で形成されていなかったり、隣接面カリエスなどで歯質がやられていない場合に適応になります。
頬舌側のベベルと同様のイメージで形成すればいいと思います。
そしてこの修復に最も特徴的なのが、隣接面を残すリッジアップです。
これにはわずかに形成をして、辺縁を被覆するRidge coverageと、全く形成を行わないRidge preservationの二つがあります。
この辺縁隆線のエナメルを残すということは歯牙の破折抵抗に大きく関与しており、特に失活歯においてはより、その保存が重要視されます。
ただ、臨床上よくあるのは、隣接のところにマイクロクラックが入っていて、そこから齲蝕が生じているケースです。
リッジアップで残すことができるのは構造的に完全なエナメル質なので、マイクロクラックやカリエスの疑いがある場合は削除すべきと考えます。
【最後に】

同論文より引用
セミナーとかでこういった形成を習っては見たもの、当初は接着に関する不安があって、脱離しないのか半信半疑でした。
しかし、きちんとした接着操作を行えば、破折や脱離はほとんど起きません。
(自分がやった修復物での脱離、破折は今のところ一件もありません。)
こういったエラーを回避するためには、術前の咬合のチェックだったり、歯牙のポテンシャルの把握っていうのが何より重要になってきます。
またラバーダム防湿や、セメントの選択なども一つの要素になり得ます。
MIであり、患者さん利益に繋がる治療法ですので、十分な経験と知識のもとでチャレンジする価値は十分にある修復法かと思います。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます。


