注意
このブログの内容は客観的事実に基づき執筆しておりますが、特定の医療行為、手技、手法を推奨するものではありません。
残念ながら医療行為に100%の成功はあり得ません。時に患者様の不利益に繋がることもあります。しかしその可能性を極力低くするための努力はできます。
論文などからの知識のアップデート、長期経過からのフィードバックを得て、患者利益の最大化に努めるべきです。その一助としてこのサイトを活用していただければと思います。
なお、全ての臨床写真は患者様の掲載許可をいただいた上で掲載を行なっております。
✔︎ 本記事の信頼性
【歯槽堤の吸収パターンとその対応】Seibertの分類とSuzukiの分類
前回のように抜歯後の骨吸収が起こってしまった症例において、審美的な結果を求めるためには歯槽堤増大を行う必要があります。
-
Case.①-1 抜歯窩の吸収について。
続きを見る
歯槽堤の吸収のパターンはSeibert の分類が一番有名かと思います。

出典:日補綴会誌 8 巻 3 号(2016)
その欠損形態に対しての具体的な治療法を示しているものは中々なくて、唯一言及しているのはSuzukiの分類なのかなと思います。
ただこれに関しても具体的に何mmの水平的、垂直的骨欠損の場合にこの手法が推奨されると言った言及はなく、それについて述べているものは僕の知る限りでは存在しません。一番知りたいのってそこなんだけどなー笑
個人的には、エビデンスベースでもなんでもないですが、軟組織のみで対応できるのはCTGの厚みに依存するわけですから、4~5mm程度が限界で、それ以上の欠損を補うためには硬組織も含めた処置が必要であると感じています。
【歯槽堤増大術】その様々な種類
実際の手法はかなりたくさんの手法があって、様々な書籍や、オンライン上で入手できる日本語の論文でも紹介されていますので、ご覧になって頂ければと思います。
そういった日本語の書籍、論文内で紹介されるイラストなんですけど、ほとんどがEDWARD S. COHENのATLAS OF COSMETIC AND RECONSTRUCTIVE PERIODONTAL SURGERYを参考に作られているのかなと思います。
こちらも全文ダウンロードできるので、英文ですけど興味ある方は参考にしてください。
これらに紹介されていないものとしては、VISTAを応用したものだったり、roll法もこれに含まれるかもしれませんが、pedicle connective tissue graftのような、有茎弁を応用したものなどがあります。
Fibro-gideを出してるGeistlichとの利益相反がある論文なんで解釈に注意が必要ですけど、Collagen matrixなんかもCTGの代用として使われてきています。
【歯槽堤増大術】実際の手技
今回のケースは Seibert Class1に該当します。冒頭の画像の通りパウチの切開線を予定し、もしフラップを閉じることができなければ縦切開を加えようかなと計画していました。
初めてCTGを扱ったオペで、写真も少ないし、お見せするのが恥ずかしい部分も多々ありますが、細かいところはスルーしてください。
Googleの規約に出血がひっかかるので、白黒にしてます。

上皮ごと採取を行なっています。

上段:術前 下段:術直後
単純に術後の収縮のことを考えられていなかったんですよね。もっとオーバーコレクションしておくべきでした。
広めにパウチを形成したらちゃんと閉じれたので、縦切開はなし。 いつもCTGは、上皮ごととってくる方法でやっています。
ということで次やるときはこういう方法でやりたいなっていうのがあって、それについて扱った論文を紹介します。
"Soft tissue augmentation of ridge defects in the maxillary anterior area using two different methods: a randomized controlled clinical trial" A. Akcalıらの著 Clin. Oral Impl. Res. 26, 2015 / 688–695

同論文より出典
CTG後に問題となるのは収縮です。
それを抑えるために本論文ではパウチを形成し、有茎弁でCTGを唇側に持ってくるっていう手法を紹介しています。
術前と術後の変化をSTLデータにして、比較をしています。
”6ヵ月後、ベースライン(t0-t6)と比較した体積増加率は、ペディクル群(1.18mm、範囲0.16-1.75)が遊離結合組織群(0.63mm、範囲0.28-1.22)に比べて有意に高かった(P = 0.03)。6ヵ月後には、対照群は1ヵ月後に記録された体積増加のほぼ半分を失った。”
中略
”ベースラインから6ヶ月間の軟組織体積の平均収縮率は、対照群(47%)が試験群(6.4%)に比べて統計的に高かった(t0-t6)。”
引用:P.691
ということで有茎弁の場合はかなりの収縮を抑えられるみたいです。
歯周形成外科においては常に血液供給に配慮しなくてはいけなくて、その観点から、有茎弁は大きなメリットになるということが窺えます。
次回に本ケースの術後を紹介しますが、収縮がかなり大きく出てしまっています。
今回のような有茎弁でいくか、術後の収縮を考慮したオーバーコレクションで行くか、上顎結節の収縮の少ない部位から結合組織を持ってくるか。
様々な選択肢があるとは思うんですが、そういった対策が必要なことを痛感させられた症例でした。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます。
次はその後のCTGの収縮についてです。
-
Case.①-3 CTG後の収縮と待機時間について
続きを見る