歯科医療従事者向け 審美修復 歯周形成外科 歯槽堤増大

Case.①-1 抜歯窩の吸収について。

 

注意

このブログの内容は客観的事実に基づき執筆しておりますが、特定の医療行為、手技、手法を推奨するものではありません。

残念ながら医療行為に100%の成功はあり得ません。時に患者様の不利益に繋がることもあります。しかしその可能性を極力低くするための努力はできます。

論文などからの知識のアップデート、長期経過からのフィードバックを得て、患者利益の最大化に努めるべきです。その一助としてこのサイトを活用していただければと思います。

なお、全ての臨床写真は患者様の掲載許可をいただいた上で掲載を行なっております。

 

 

 

✔︎ 本記事の信頼性

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【かなりの変化が起こる】抜歯窩の骨吸収

 

 

before-treatment

術前の状態

 

【外科処置を最小限にしたい場合のみいいかも】ジルコニアブリッジの選択

Case1の患者さんは他院で入れたメタルの接着ブリッジの審美障害を訴えて、来院されました。最終的にはジルコニアブリッジを選択されました。

 

外科的処置は避けたいとのことだったので、インプラントはその選択肢から外されました。

 

ブリッジの選択はインプラントと比較した場合に、歯質の切削量が増えるというのが問題の一つとなってきます。

 

今回は両隣在歯共に失活歯であり、舌側のエナメル質は失われていたため、接着ブリッジの選択は除外されます。

 

患者さんと相談した結果、ジルコニアのブリッジで進めていくことになりました。

 

写真とワックスアップから、これだけの吸収があることを説明したところ、CTGによる歯槽堤増大は受け入れていただきました。

 

その際に抜歯後の骨吸収はどの程度起こるのかということを論文ベースで説明を行いました。

 

臼歯部で保険診療であれば、吸収ってそこまで気になることはないと思うんですけど、前歯部となるとやはりその審美性にかなり影響を及ぼすので、何かしらの対応が必要なる可能性が高いです。

 

 

”A systematic review of post-extractional alveolar hard and soft tissue dimensional changes in humans.” Tan WL,らの著 Clin Oral Implants Res 2012; 23, 1–21.

 

ヒトの抜歯後12ヶ月までの歯槽骨の硬組織と軟組織の両方の寸法変化の大きさを評価したレビュー論文です。

 

全文を104本抽出した中から、包括基準に基づき20本の論文がレビューに含まれています。

 

軟組織、硬組織を別々に分けて分析しているところに新規性があるみたいです。

 

この辺の話だと2005年に出されている、Araujoの犬の実験が有名かと思いますが、歯槽骨の吸収は束状骨-シャーピー線維-歯根膜の関係性が崩れることで、抜歯後に速やかに吸収が起こるとされています。

 

抜歯原因としては破折、カリエス、外傷、補綴的、矯正的、ペリオ的な問題っていうのがあると思いますが、ここでは特にその原因別に見ているわけではないです。

 

では早速結果を見ていきましょー。

 

 

【論文の結果】垂直的骨吸収のパターン

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垂直的変化

 

まずは垂直的な変化です。

 

一部のデータでは近心、遠心、頬側、口蓋側にわけてそれぞれ見てる(それぞれ3mで(M)0.5 ± 0.9 mm, (D)0.5 ± 0.9 mm, (B)1.2 ± 0.8 mm, (P)0.9 ± 1.1 mm)けど、

 

一番欲しいのは頬側であり、データとしてもここの部分を一番多く扱っています。

 

6m時点でのデータを見てみると大体1~1.5mm程度の吸収が見られるのかなと。

 

割合としては11~22%の吸収となるみたいです。

 

ちなみに近遠心は隣在歯の存在があるので、吸収の程度は頬舌側と比べると緩徐になっています。

 

やっぱり歯根の存在が重要なんだなっていうのが示唆されますよね。。。

 

 

 

【論文の結果】水平的骨吸収のパターン

 

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水平的変化

 

次に水平的な変化です。

 

こちらは6mで大体2.5~4.5mmくらいの吸収が認められます。割合としては29~63%

 

水平的な吸収には特徴があって、骨頂からの距離が離れれば離れるほど、吸収が緩徐になるという傾向があるみたいです。(真ん中の図)

 

やっぱり臨床体感と同じ結果になりました。

 

垂直的な減少はそこまで気になることはないんですけど、水平的な変化は少なくとも垂直的なものの2倍以上起こると考えて良さそうです。

 

雑感

 

ということで、臨床実感と同様、垂直的なものに比べ、水平的な吸収の方が多いということがわかります。

 

その他、喫煙者の場合は非喫煙者と比較して吸収の割合が多く出るとか、抜歯後2,3ヶ月の吸収が最も早いとか、即時義歯の使用で吸収の割合が上がる可能性があるとか、そう言った記載がありました。

 

このあたりの記述は自分の臨床体感とも一致するし、正常な治癒を阻害する要因のせいでより吸収が起こるという点で納得できます。

 

今回のケースのように既にブリッジが入っているようなケースでは上記のような吸収が起こっているため、その補償をCTGなどでしてあげないと隣在歯と同じような歯頸部の立ち上がりを表現するのは難しいです。

 

保険のブリッジを入れるにしてもリッジプリザベーションを行い、せめて歯槽堤の保存に努めたいものです。いつか論文でも紹介できたらいいですが、ルートサブマージンや、ポンティックシールドといった手技も有効ですね。

 

今日も最後までお読みいただきありがとうございます。

 

次回は今回のケースのような歯槽堤が喪失してしまった場合に行う歯槽堤増大について見ていきたいと思います。

 

次はこれ
Case①-2 歯槽堤増大について。

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  • この記事を書いた人

Dr.H

岩手県花巻市の成田歯科医院で歯科医師をしてます。論文をベースに臨床に役立つ情報を紹介するブログ。一般の患者さんの悩みに答えられるような内容もあげていきます。もしこんな話題を扱って欲しいなどの要望があれば問い合わせよりご連絡ください。

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