注意
このブログの内容は客観的事実に基づき執筆しておりますが、特定の医療行為、手技、手法を推奨するものではありません。
残念ながら医療行為に100%の成功はあり得ません。時に患者様の不利益に繋がることもあります。しかしその可能性を極力低くするための努力はできます。
論文などからの知識のアップデート、長期経過からのフィードバックを得て、患者利益の最大化に努めるべきです。その一助としてこのサイトを活用していただければと思います。
なお、全ての臨床写真は患者様の掲載許可をいただいた上で掲載を行なっております。
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【どれくらい収縮するのか】結合組織の経過
前回紹介したCTGですが、やはりかなりの収縮が認められました。
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Case①-2 歯槽堤増大について。
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術後一週の時点では腫脹があるので、ボリュームの維持をしてくれていそうに思うんですが、それ以降はあれよあれよという間にきれいに引き締まってしまいます。
これを防ぐために有茎弁を応用するとか、オーバーコレクションするとか、収縮の少ない上顎結節から結合組織を持ってくるとか、そう言った工夫が必要でした。
今回こういう経験をしたので、一般的に移植後の結合組織の収縮はどのくらい起こるのかを調べてみました。
術後収縮についてよくリファレンスに出されるもののうちの一つが上記に出ているCorn HらのGingival grafting for deep-wide recession a status report. になります。
ここではCTが厚い場合は25%程度の収縮、薄い場合は45%の収縮ということで厚さによってその収縮の程度が変わるということが報告されています。
ということで3~4割の収縮を頭に入れた上で今後は処置に望まないといけないということがわかりました。
本当に結構収縮しちゃいます。。。
【待機時間】オペ後、どれくらい待ってポンティックを押し始めるのか
一般的に、前歯部の歯周外科を行った場合には、半年〜1年程度歯肉の反応を待ってから歯肉縁下形成を行ったりすることを推奨していることが多いと思います。
歯槽堤増大の場合は、歯冠長延長術みたいに骨整形を伴わないし、前述のような長い待機期間を取らなくても大丈夫なのかなと思います。
肝心なのはCTが安定するのにどれくらいかかるかだと思います。
そこで、これもよくリファレンスに出される論文ですが、最近すごく好きなDr.Mörmannの論文を紹介します。
【今日の論文】"The Relationship Between Success of Free Gingival Grafts and Transplant Thickness Revascularization and Shrinkage—A One Year Clinical Study" Werner Mörmannらの論文 J Periodontol 1981; 52: 74–80.
この論文の著者であるDr.Mörmannは血流に関する研究をいろいろやっていて、他にもすごく面白い論文を出されています。
同様の研究では日本人の信藤先生も有名ですね。
(英語表記だとNobutoなので、しばらくの間ノブート先生という海外の先生なのかと思ってました笑)
論文自体は古いんですが、近年の再生療法や根面被覆の論文で色々とリファレンスされています。やっぱり血流は大事ですね。
この論文はCTGの収縮について述べられるときにリファレンスとして出されることが多いのですが、実際のサンプルはFGGです。
なので厳密にいうと違う部分もあるとは思うのですが、著名な先生方がみんなこれを使っているので、一応押さえておいたほうが良い論文かと思います。
初めてみた器具だったんですけど、ムコトームっていう野菜のピーラーみたいにFGGを切り取る器具が使われてます。これ今でも使われてるんですかね?

"The Relationship Between Success of Free Gingival Grafts and Transplant Thickness Revascularization and Shrinkage—A One Year Clinical Study" Werner Mörmann et al J Periodontol 1981; 52: 74–80.より出典
内容は割愛しますが、今だったらできないだろーなっていう方法で研究が行われています。昔の研究ってそういう類のもの多いですよね。
術後28日目には、すべてのグラフトで有意(P < 0.01)なapicocoronalの収縮が見られたが(図4)、それ以降は有意な追加の収縮は見られなかった。
移植日から術後360日目までの収縮率は MI 45%、MII 44%、MIII 38%、S 30%であった。
"The Relationship Between Success of Free Gingival Grafts and Transplant Thickness Revascularization and Shrinkage—A One Year Clinical Study" Werner Mörmann et al J Periodontol 1981; 52: 74–80.より引用
ということであくまでFGGなんで、CTGとは血液供給が全く同じとはいえないので、注意が必要ですが、厚いと収縮は相対的に少なくなる傾向があるというのはわかると思います。
僕の症例においては大体1mm程度のCTの厚みは確保しているので、薄くはないと思うんですが、写真を改めて見ると30%くらいは収縮していますね。
また収縮の完了は4週で終わるっていうのがここで言われていることです。こう言った観点から今回のケースの4カ月という待機期間は間違ってはいないのかなと思います。
他の論文では6週で大体の収縮は終わるとされています。なので大体1カ月くらいで収縮は完了するってイメージでいいかなと思います。
【自分の中の結論】CTG自体の収縮は約1カ月で終了する可能性が高い。しかし組織の安定化を考慮し、それ以上の待機時間を設けた方が良さそう。
ってのが僕の結論です。どれくらい待った方が良いとか論文的に考察できるものがあれば、ご教授いただけると幸いです。
次回はポンティック部の調整と、プロビジョナルの調整方法についてみていきます。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます。
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Case.①-4【特にポンティックサイト】プロビジョナルレストレーションの調整について
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