注意
このブログの内容は客観的事実に基づき執筆しておりますが、特定の医療行為、手技、手法を推奨するものではありません。
残念ながら医療行為に100%の成功はあり得ません。時に患者様の不利益に繋がることもあります。しかしその可能性を極力低くするための努力はできます。
論文などからの知識のアップデート、長期経過からのフィードバックを得て、患者利益の最大化に努めるべきです。その一助としてこのサイトを活用していただければと思います。
なお、全ての臨床写真は患者様の掲載許可をいただいた上で掲載を行なっております。
✔︎ 本記事の信頼性
【だいぶ待ったよ】ポンティックの調整
【1回目の調整】骨頂までの距離を測り、垂直的に押す!
前回の論文を参考にして、CTG後4カ月の待機期間を経て、ポンティック部の調整に入ります。
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Case.①-3 CTG後の収縮と待機時間について
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マテリアルがジルコニアの場合、基底面形態は改良オベイドが現状選択されると思うので、問題はそれをどの程度の深さまで挿れて良いのか。ある論文では
最近のデータや経験から、アクティブなコンタクトの方が良いということが示されている。
中略
ポンティックの基底面は骨頂から1mm、またはそれ以上離す。
Dylina TJ. Contour determination for ovate pontics. J Prosthet Dent 1999; 82:136–142.より引用
という記載がなされていますが、これはケースレポートに近い論文だったし、この辺りのを組織学的にみたりとか、比較研究したものは僕の調べる限りありませんでした。
小濵先生の前歯部審美修復 天然歯編 では5分以内の貧血帯の消失っていう記載があったかと思います。
この辺りを参考に進めるほかないので、以下の画像のように大体の骨頂までの距離を測ります。

骨頂までの距離を確認します。
上記の画像はちょっと注意が必要なんですけど、斜めに浸麻針を挿れている(右図の黄色矢印の角度で挿入してしまっています)ので、実際の値よりも大きく出てしまいます。しっかり垂直に針を挿入して位置関係を見ていかないといけません。

ポンティック部の調整
今回は自分のオペの至らなさで、水平的な造成量が不足気味だったので、なんとかその体積を水平方向に持っていけないかなと思って、一回めは垂直方向にのみ押して、次回来院時に水平方向に押してみようと考えました。エビデンスは何もありません笑
ちなみに下段中央の写真は他の著名な先生方が結構やっているので、一応撮りましたが実際は削ってないです。有限の組織を失いたくなかったからです。1回目はこれで終了。
もうこの時点でプロビジョナルの着色というか、変色が出てきてしまってます。
【2回目の調整】水平的に押し始める & エナメルのフローで綺麗に!

既存のプロビをカットバックし、エナメル色のフローレジンを流し込みます。
2回目の調整です。プロビの着色が嫌だったので、多分オリジナルのテクニックだと思うんですけど、カットバックして、そこにエナメルのフローレジンを用いてプロビの着色の改善を図ります。
よく普通のA2とかのCRを唇面に盛るっていうのはあると思うんですけど、カットバックしてやることで切端の抜け感などを表現することができます。
クリアのシリコンバイトを用いて取り込み印象をして、その後右図のようなイメージでカットバックし、ボンディングを塗布後、エナメルのフローレジンを流し込み照射します。

骨頂までの距離を測定します。
tooth-pontic間は骨頂-コンタクトが6.5mmまで乳頭ができるとされているので、浸麻針で6.5mmのゲージを自分で作成して、下部鼓形空隙の調整量の参考にします。
この時、ポンティック部分は前回垂直的に押したところから、唇側方向に押すようにレジンを盛っています。
何度か調整を加えてできたプロビジョナルがこちら。

プロビジョナルの調整を終えたところ
シンプルではありますが最初のプロビと比較すると、切端の抜け感とか、対称性、乳頭の歯冠との関係とかその当時にしてはなかなかよくできたのではないかと思います。
技工士さんにセカンドプロビジョナルを作ってもらったりした方が楽かもしれないですけど、若いうちは自分で仮説を立てつつそれを表現し、どういう反応が起こるのかということを確認して、次につなげるっていうサイクルを回していく方が成長につながるかなと思います。
時間はかかるので、経営的な問題はありますけど。
【最後の微調整】ある程度の期間を待って最終印象へ
この段階で様々な審美的な基準と照らし合わせ問題ないことを確認します。この辺の論文もいつか扱おうと思います。
プロビジョナルを除去した直後のポンティック基底面の感じとか、乳頭のつまり具合とか、そういった部分が問題ないかも確認していきます。

参考にした様々な論文
プロビジョナルを外した直後の乳頭はこんなかんじ。

乳頭が立っている感じが最高です。
特に異常な炎症兆候も見られないし、乳頭も埋まってて、窮屈な感じもないし、乳頭がピッと立ってる感じが堪らんです。
ポンティックをどれだけ押して良いのかっていのは結局答えが出ていないんですけど、プロビジョナルの段階で基底面の感じを見ながら調整していくしかないかなと思っています。
この状態で2ヶ月弱待って最終印象に入りました。
【今日の論文】"Papilla Proportions in the Maxillary Anterior Dentition" Stephen J Chuらの著 The International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry Volume 29, Number 4, 2009
審美の基準って色々あると思うんですけど、その中で僕は特に乳頭に興味があって、すごい好きなんです。
この論文は特にペリオ的、修復的に問題のない患者の天然歯をサンプルにして、歯冠と乳頭のバランスを見ています。

Papilla Proportions in the Maxillary Anterior Dentition" The International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry Volume 29, Number 4, 2009 より出典
測定したCI、LI、CAの平均MPP、DPPはそれぞれ41%と42%、41%と41%、43%と45%であった。
Papilla Proportions in the Maxillary Anterior Dentition" The International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry Volume 29, Number 4, 2009 より引用
ということで歯冠の長さと乳頭の関係は、大体40%程度っていうのがが天然歯に見られる傾向みたいです。
補綴で無理に乳頭部を埋めに行ったりすると不自然に見えるのは、こういったことからもわかると思います。
骨頂との関係や、リップラインとの関係もあるので、一概にこの数値を表現できるわけではないですが、一つの基準として知っておきたい知識です。
次回は最終印象と、ラボコミュニケーションについてです。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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Case①-5 最終印象について。ダブルコード、シリコンの種類、ポンティック部の伝達、etc...
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