注意
このブログの内容は客観的事実に基づき執筆しておりますが、特定の医療行為、手技、手法を推奨するものではありません。
残念ながら医療行為に100%の成功はあり得ません。時に患者様の不利益に繋がることもあります。しかしその可能性を極力低くするための努力はできます。
論文などからの知識のアップデート、長期経過からのフィードバックを得て、患者利益の最大化に努めるべきです。その一助としてこのサイトを活用していただければと思います。
なお、全ての臨床写真は患者様の掲載許可をいただいた上で掲載を行なっております。
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【CEJの重要性】全ての基準
よく根面被覆の成果を評価する際に用いられる言葉として、CRC(Complete Root Coverage)やARC(Average Root Coverage)というものがあります。
これらは全てCEJが基準となっており、CEJを覆えているのかどうか。という基準で根面被覆の出来が評価されます。
しかし、NCCLなどでCEJが喪失しているような場合はその基準がなくなってしまうため、修復的に再建をしてあげる必要があります。

修復的にCEJを設定し、理想的なCRCが達成できた場合、あとはそれが長期的に維持できるかどうかになってきます。
しかしCRで修復をしている場合、その部分や近接する部分の付着は、天然歯の場合と同様に推移していくのでしょうか。
臨床実感としても、CRはセラミックと比較すると汚れがつきやすいイメージがあります。
その結果として根面被覆の予後が左右されるのかどうか。今日はその影響についてみていきます。
【今日の論文】"The Influence of Cementoenamel Restorations in the Treatment of Multiple Gingival Recession Defects Associated with Noncarious Cervical Lesions: A Prospective Study" Massimo de Sanctisらの論文,The IJPR Volume 40, Number 3, 2020
この論文はイタリア、ミラノにあるサンラファエレ大学の歯周病科の教授Massimo de Sanctisらによる2020年の論文になります。
AAPの粘膜疾患の新分類にも”歯肉の状態だけじゃなくて、歯頸部病変もしっかり見ようよ。”っていう記載があるのに、それを含めた根面被覆の治療成績があまり報告されていないってことでこの論文が出されたみたいです。
【サンプル概要】RT1の連続した歯肉退縮
複数の歯肉退縮の治療を行う必要のある患者の中から、23名の93歯が評価対象に選ばれています。
具体的にはRT1の歯肉退縮が少なくとも連続した2歯に存在することで、他には全身的に健康であるとか、口腔清掃に協力的であるっていうのがあります。
除外基準は全身疾患とか、喫煙とか、よくあるやつで、特筆すべきものはありません。
【術式】MCAFとCTGの有無
手術の1週間前に修復処置が行われています。冒頭のZucchelliらの論文に倣うんですが、それで推定されるCEJよりあえて根尖側に1mmのところにCEJを設定しています。
あとはまあ通法通りのCR充填をしている感じです。
オペに関してもZuccelliらのMCAFで行なっています。

ただし、歯肉の厚みが1mm以下とされる部位においてはCTGを併用しています。
【結果】CR修復は根面被覆の予後には影響しなそう。しかし、、、
それでは一部の結果をみてみます。
a-CEJはanatomical-CEJで、r-CEJはrestorative-CEJ→CRした方ということです。
臨床的指標としては、この二群で”r-CEJの方が悪い”という結果は一つもありませんでした。つまり、修復的処置が根面被覆の治療成績に影響はなかった。ということです。


今回のr-CEJは推定されるCEJより1mm根尖側に設定(根面被覆が得やすい方向)しています。当然良い結果は得やすいわけです。
また、有意差はなかったんですが、他の測定項目にあるプラークの付着量はr-CEJの方が高い傾向があります。
さらにサンプルが限られた数であることと、この結果として出ているものは1年の経過しか出ておらず、長期的な予後はまだ不明ということに注意が必要になってくると考えられます。
【まとめ】
今回の結果は修復的な処置が根面被覆の成功率には”短期的には”大きな影響がない。ということになりました。
やはりこれも解釈には注意が必要で、これからの長期的な予後を見ていかないといけないし、さらに大規模な研究が必要になってきます。
限定的な結果にはなりますが、現状はこういった論文を元に正当性を見つけていくしかないのかなと考えます。
経年的なCRの劣化に伴う歯肉の反応が個人的には一番気になるところですが、適切なブラッシング指導や、場合によってはCRの再修復など、患者さんに前もってお伝えしていくことがここでも重要になってくるかと思います。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます。
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