根管治療をおこなった歯は、枯れ木のような状態になり、割れやすくなる。という表現を用いている歯科医院さんも多いです。
果たして本当に根管治療を行った歯はそのような状態になるのでしょうか?
答えはNoです。
今回はその誤解を解いていきます。
【確かに神経を取った歯は割れる】なぜそのような認識になったのか。
根管治療をすると歯が割れやすくなるという誤った認識が浸透しているのはなぜなのでしょうか?
神経をとった歯が歯根破折によって抜歯になるということは事実としてあります。
以下の論文はその事実を示す有名な論文で、抜歯になる原因の半数以上が歯根破折によるものとしています。
この論文の結果を鵜呑みにして根管治療をした歯=歯根破折しやすいというのは早計です。
その理由を見ていきます。
【神経をった時の構造的な変化】枯れ木みたいにはなってない。
先述の通り、根管治療をした歯は枯れ木みたいになるという表現がされます。
枯れ木っていうのを考えると、乾燥によって水分がなくなるという状況が連想されると思います。
神経をとった歯は本当にそのような状態になっているのでしょうか。
神経がある歯と神経がない歯の違いを調べた論文があります。
この論文によると、機械的な性質に差はないという結論になっています。
さらに両者の水分の含有量の差は7%しかなく、これが臨床的に重要ではない。というふうに述べています。
よって神経を取ろうが取らまいが、歯の性質は変わらないということになります。
じゃあなんで神経をとった歯は割れやすいというイメージを持たれるのでしょうか。
【臼歯:辺縁隆線が大事】大事なのは残った歯質の場所と量
大事なのは神経をとるというプロセスを考えることです。
虫歯がどこにできることが多いかと言うと歯と歯の間です。
そうするとその治療の際にその部分の歯質が失われてしまいます。
この部分が非常に重要なんです。
この図は歯質がどのように失われると、割れやすくなるのかっていうのを示した図になります。
上図の部分を削ると、その数字分はの強さが失われることを示しています。
神経をとったり、歯の真ん中を削っても歯の割れやすさにはそこまで影響がないと考えられます。
歯の割れやすさに影響するのは、辺縁隆線と呼ばれる、隣り合う部分の歯質の有無が重要なのです。
なので、神経を取るうんぬんが大事なのではなく、歯がどれくらい残っているのかが重要であることが見えてきます。
詳細は省きますが最近の論文においてもこの事実は支持されています。
【前歯:唇側のエナメル質が大事】
前歯部分は、臼歯と形が違うし、それに加えて力のかかる方向が異なってきます。
そのため先ほどの臼歯部の動態とは少し異なる挙動を示します。
ここでも神経を取った後の歯の剛性はそこまで大きく変化しないことがわかります。
それよりも重要なのは唇側のエナメル質を削除する量に依存して、歯の構造が弱くなっていくことが説明されています。
しかしながら、ラミネートベニアなど、唇側の歯質に対し、接着修復を用いることで歯の剛性が天然歯と同等になるという風にも言われています。
それが以下の結果。
ラミネートベニアというと、エナメル質接着のイメージですが、歯の剛性の回復という意味では、象牙質接着においても問題ないという結果になっています。
よって前歯部においては唇側のエナメル質を残すことが歯の剛性を担保する上で重要というのが結論です。
【神経を取った歯のデメリットは?】取り返しのつかなくなる前に気付かせてくれる役割
ここまでの話でいくとじゃあ神経を残す意味って何?って思われると思います。
個人的な解釈としては火災報知器的な役割がなくなので神経はあった方がいいと考えます。
火災報知器があることで、火が燃え移る前に早期発見ができますよね。この意義が歯においても言えると思います。
神経を失った歯は虫歯が進行していても自覚症状としてとして感じることができず、気付いた時には手遅れという状態になりかねません。
また、現状統一見解はないですが、神経のある歯の方が噛み合う際の強い力を回避できるとする論文もあります。
噛む力が弱い方が割れるリスクも低くなりますよね?
これらの結果から神経はあった方がいいと結論づけられると思います。
しかしながら、神経を取ったからといって、明らかに割れやすくなるというわけではないので、あまりに悲観的になる必要もありません。
できるだ神経を残す治療を受け、もっと言えばそのような状態にならないように予防するっていうことが何より重要だと思っています。
神経を取ったとしてもセラミックなどの接着修復を用いることで歯の強さを取り戻すこともできます。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
ココナラで歯科相談サービスを承っております。もし困り事があればご相談いただければと思います。