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【歯科医が選ぶ良い歯科医院の見分け方】:根管治療編

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この記事は一般の方向けに書かれた記事です。

 

数ある歯科医院の中で、どこに行ったらいいかわからないという方も多いと思います。

 

そんな悩みを持つ方に、歯科医院を選ぶ際の参考にしていただきたいポイントを挙げていきます。今回は根管治療編です。

 

 

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【まずホームページをみてみよう!!:来院前に確認できること】ラバーダム、マイクロスコープ、CBCT、Ni-Ti

 

根管治療の大原則は複雑な根管系をできる限り無菌に近い状態にすること。これに尽きます。

 

そのためには様々な器具や装置を駆使して治療に当たらなくてはいけません。今から紹介することは実際に来院する前に確認できることです。

 

昨今ほとんどの歯医者さんは自前のホームページを持っており、それぞれの医院の特色をそこで示してくれています。

 

根管治療に関しても、しっかりやられている先生は上記の使用を明言されていることが多いです。以下になぜそれぞれの器具や装置が必要なのかをみていきます。

 

【ラバーダムの使用】細菌の侵入を徹底的に防ぐ。

口腔内にはものすごく沢山の細菌が存在しています。一方で根管治療の目的は根管内の無菌化です。

 

その実現のためには細菌のたくさん存在する口腔内と、治療をする歯をしっかり隔離してあげなくてはいけません。

 

そのために使われるのがラバーダムです。

 

これを用いずに治療を行なってしまうと歯の穴を開けたところにどんどん細菌が侵入してきてしまうことになります。それだけでなく、根の中の消毒薬が喉の奥に行くのを防いでくれたり、器具の誤飲などを防いでくれる役割もあります。

 

実際にラバーダムを使用して治療しているところは後半で紹介していきます。

 

 

【マイクロスコープの使用】裸眼、ルーペでも見えないところを見る。

根っこの中はものすごく複雑な形態をしています。基本形はあるのですが、人によって本当に多種多様なものです。

 

繰り返しになりますが、目標は細菌を徹底的に除去することですから、その隅々に汚れがないかを確認する必要があります。

 

特に以前に治療をした歯の再治療に関しては汚れが広範囲に広がっていることが多かったり、掃除されることなく治療を終えられてしまった根管が多かったりするので、その部分を見つけるためにはルーペでも役不足で、マイクロスコープが必須であると考えます。

 

根の先端はかなり細くなっているので、拡大倍率の違いも圧倒的だし、通常の光源では光が到達できず、その状態を観察することは不可能に近いです。また、マイクロスコープの場合、視軸と光軸が唯一一致しているため、ルーペでは影ができて観察できない部分を観察することもできます。

 

これまで観察できなかった部分が見えるようになることで、当然根管内部の感染除去のクオリティも上がります。

 

マイクロスコープを用いた根管治療の方が治療成績が良かったとする論文も出ています。

 

【CBCT:歯科用CTによる診査・診断】複雑な道を進むための地図を得る。

先ほども述べたとおり、根管内は複雑な形態をしており、それも人によって様々です。通常のレントゲン写真で把握できることも多いのですが、あくまで二次元の写真になるので、得られる情報はCBCTと比較するとどうしても少なくなります。

 

特に、再発が認められて治療が必要となる歯牙の場合、なぜそういう症状に至ったのか、どこにその原因があるのか。そういったことを実際の治療を始める前に情報を得て、治癒に向けての戦略を構築できることは非常に有意義なことになります。

 

ただし、CBCTのように放射線を用いる場合には、その行為を行なうことによって得られる利益が不利益を上回る場合に、防護の最適化を行なった上で実施されるべき。というALARAの原則というものがあります。

 

治療にあたって、CBCTを必ず取ることが良いというわけでは決してなくて、例えば前歯部の抜髄など、比較的単純な根管形態の歯牙の治療のためにCTが必須であるとは思いません。歯種や状態によって、その適応を考慮しないといけません。

 

【Ni-Tiファイルの使用】元々の根管形態を維持する。

Ni-Tiは従来のステンレススチール(SS)ファイルと比較して、根管に対する追従性が高いことが最大のメリットです。SSファイルは、太さが上がると非常に硬くなるので、本来少なからず湾曲している根管を、人為的にまっすぐにしてしまい、部分的に歯質が薄い部分ができてしまったり、本来の根の先端に到達しにくくしてしまったりします。

 

またモーターによる回転切削で根管を拡大していくので、手用のものと比較して、その治療効率も格段に上がります。

 

かつては折れやすいことが問題点として挙げられていましたが、最近出ている製品はその欠点も大幅に改善され、湾曲の強い根管であってもその高い追従性により、オリジナル形態を維持したままで治療することが可能になっています。

 

いまだに各社様々な特徴を持った新製品を発表されているので、今後もよりNi-Tiファイルの普及は広がっていくことと思われます。

 

【その他】MTA、超音波洗浄装置、滅菌器、etc...

ホームページ上で確認しやすいのは上記の3点になると思いますが、それ以外にもよりよい根管治療を行うために、個人的に必須と思う項目を簡単に紹介します。

【MTA】Mineral Trioxide Aggregateの使用

日本では覆髄材としてのみ薬事認可がおりている薬剤になりますが、根管充填や、パーフォレーションリペア、逆根管充填用の材料として諸外国では用いられています。

 

【超音波洗浄装置】

先ほどのNi-Tiファイルを用いて根管内を拡大しても、物理的に根管内に接触できる面積は約50%です。残りの半分をどうやってきれいにするかというと薬液による化学的洗浄によって行います。よって洗浄というのは非常に重要な要素になります。

 

根管内は非常に細いので根の先端にまで薬液を到達させるのは非常に難しいのです。その効率を劇的にあげてくれるのが超音波洗浄装置です。

 

超音波の持つ特殊な効果によって、その薬液の攪拌をしてくれることにより、物理的に除去することのできなかった汚染物を取り除くことができます。

 

【滅菌器, etc...】

繰り返し述べている通り、根管治療の目的は根管内の可及的な無菌化ですので、使用している器具がきちんと滅菌されているかも非常に重要です。

 

様々なクラスの滅菌器がありますが、クラスBと言われる基準の滅菌器があることが一つの目安になるかなと思います。しっかりやっているところは院内掲示などにポスターを出していることも多いと思うので、そこで確認可能かと思います。

 

その他、細かいところでは、根管充填の際のガラスセラミック系のシーラーの使用であるとか、マイクロエキスカの使用であるとか、色々あるのですが、収拾が付かなくなりそうなので、この辺で終わりにしておきます。

 

質問などがあれば、コメント欄にお願いします。

 

【どんな流れで治療するの?:来院してからわかること】治療前後の説明、隔壁、仮歯(仮封)

後半は実際に来院して見てからわかることになります。こういったことをやってくれるかということを聞いてみるのも一つかもしれません。

 

問診、レントゲン撮影などが終わると、それらの情報から得られる診断を元に患者さんに様々な説明を行なっていきます。

 

全ての治療において、100%の成功はあり得ませんから、起こり得る事象や、もしそうなった時のリカバリー方法費用や回数など、そういったことを事細かく説明してもらえるといいですね。

 

【実際の手順】旧修復物の除去、ラバーダム、感染歯質の除去、隔壁

それでは実際の治療手順とともに、根っこの治療がどのような順番で行われているかみていきましょう。

 

下記に提示する患者さんの詳細は省略しますが、右上の歯に違和感を感じ、様々な診査診断の結果、根管治療をすることになりました。

 

まず旧修復物を除去していきます。当然健康な歯質は削らないように慎重に除去を行なっていきます。今回のような修復物が入っていない初発のケースもあるので、その場合は、最初からラバーダムをかけていきます。今回のケースは、修復物を除去しても神経の空間に到達する恐れはなかったので、修復物の除去後にラバーダムをかけていきます。歯の周りに隙間ができないよう、マイクロ下で確認していきます。その確認を終えたのちに、写真右に見える白い裏装材を除去していきます。

 

裏装材を除去したところで、次は感染歯質の存在を確認していきます。左の写真のような、赤い染色液を用いて感染しているところと、感染のないところの見極めをしていきます。染めては感染しているところを削り、染めては削り、を繰り返し、染まらなくなったところまでいくと、右写真の中央に見えるように神経が入っている空間が露出しました。

 

術前の診査の段階で神経が死んでしまっている可能性はかなり高かったのですが、予想通り根管内部からの出血は全く認められませんでした。もし、出血があるような場合は、その状態によって神経を残せる可能性もあります。

 

感染歯質の除去後は虫歯の詰め物に使うようなコンポジットレジンを用いて、【隔壁】というものを作っていきます。アクセスキャビティ(根っこの内部につながるところ)が埋まらないように、テフロンテープで保護して作成しました。

 

右写真のような状態になって初めて、根管治療が開始できます。

 

この状態で根管治療を行わないと、治療が複数回かかる場合に、ラバーかけるのが大変になるし、色んなところから感染物質が入ってきてしまう恐れがあるし、消毒に用いる薬液などが根管外に漏れてしまうなど、デメリットが多くなります。さらに、最終的な修復物が入るまでに両隣の歯や、噛み合わせの歯との接触を保っておかないと歯はどんどん移動してきてしまうので、その予防のためにも隔壁は必須です。

 

急性症状が強く出ている時は噛み合わせを落とすこともあるんですが、あくまで一時的な対応です。他院からセカンドオピニオンで来院される方で、クラウンを外したままで、仮の蓋が剥き出し。っていう状態も多くみられますが、これは感染だったり、歯牙移動という観点から非常に好ましくないと考えられます。

 

また右写真のようにしっかりと根管内が見えるように隔壁の内面も削除して、根管治療を行なっていきます。

 

治療の後は、仮の蓋をするんですが、仮歯が入らない場合は二重で蓋をします。右のオレンジのものは削らないと取れないくらいの強度を持っていますし、隔壁のおかげで仮の蓋の体積自体も小さくすみますから、次回までの来院の間に取れてしまうといい恐れもほぼありません。

 

元々クラウンが入っている場合や、残存歯質が少なく、最終修復物がクラウンになるような場合は、初回の段階で仮歯を作成します。

 

一回の治療で根管に最終的なお薬を入れることはよくありますが、その後の土台を作るのを同日にやることは推奨されません。(メタルコアでの印象の場合は別)同日の治療時間内に根管内のお薬が完全に硬化することはなく、別日に土台を立てますので、その間の感染を防ぐ意味でも仮封をしっかりすることは大事になります。

 

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【保険診療の限界】ここまでの治療を行うことは不可能に近いです

ここまで根管治療を受けるにあたって、その歯科医院の選び方、根管治療の流れなどをみていきましたが、最後に厳しい現実をお伝えしないといけません。

 

個人的には保険診療の範囲内でベストな根管治療を提供するのは現実的に難しいと考えています。これは多くの歯科医師も同じだと思います。

 

我々は当然再発のない根管治療を提供したいと考えていますが、以下の論文より、国内においては約半数の歯が再発を起こしている現状があります。これは保険請求のデータから鑑みても見ても明らかです。

 

これは海外論文の報告と比較して、ものすごく悪い治療成績になります。

 

残念ながら診療報酬や使える材料、器具、時間などの観点から、保険診療の範囲内で、上記に挙げたようなポイントを全てカバーするのは至難の技です。

 

結果として上記のポイントを多く網羅できるのは保険外の根管治療にならざるを得ません。(決して保険治療が全て悪いといっているわけではありませんので、ご理解ください)

 

保険外の根管治療にかかる費用は、その地域や先生の技術よって様々ですが、インプラント治療を回避し、長期的に自分の歯を残すことを考えたときに、決して高すぎる費用ではないと考えます。

 

先生との個人的な相性もありますから、自分にとってどの医院が一番いいかは人それぞれだと思いますが、もし不幸にして根管治療を受ける必要が出てきてしまった時、皆様の通院する歯科医院選択のための参考になれば幸いです。

 

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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  • この記事を書いた人

Dr.H

岩手県花巻市の成田歯科医院で歯科医師をしてます。論文をベースに臨床に役立つ情報を紹介するブログ。一般の患者さんの悩みに答えられるような内容もあげていきます。もしこんな話題を扱って欲しいなどの要望があれば問い合わせよりご連絡ください。

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