歯科医療従事者向け 審美修復 歯周形成外科 歯槽堤増大

Case①-5 最終印象について。ダブルコード、シリコンの種類、ポンティック部の伝達、etc...

 

注意

このブログの内容は客観的事実に基づき執筆しておりますが、特定の医療行為、手技、手法を推奨するものではありません。

残念ながら医療行為に100%の成功はあり得ません。時に患者様の不利益に繋がることもあります。しかしその可能性を極力低くするための努力はできます。

論文などからの知識のアップデート、長期経過からのフィードバックを得て、患者利益の最大化に努めるべきです。その一助としてこのサイトを活用していただければと思います。

なお、全ての臨床写真は患者様の掲載許可をいただいた上で掲載を行なっております。

 

 

 

✔︎ 本記事の信頼性

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プロビジョナルによる最終補綴前の調整が終了したので、最終印象に入って行きます。

 

初診時から考えるとここまでで半年ちょっとが経過しています。

 

 

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【ダブルコードで行います】歯肉圧排について

今回の様に失活歯で歯肉縁下形成をしている様なケースでは基本的に二重圧排をしていきます。

 

当院においては一重目は3-0のシルク、二重目にそれぞれの歯肉の厚み、深さ歯肉の深さに応じた太さのコードを挿れていきます。(大体シュアコードの000を使うことが多いです。)

 

さらにTIssue Gooという止血剤が添加してあるジェルを併用しています。

 

ジェル状になっているので、圧排糸を挿入するとき、除去する際の歯肉へのダメージが軽減できると考えています。

圧排糸を挿入したところ。やっぱり唇側のボリューム足りないんすよね。。。

実際の写真はこんな感じ。咬合面から見たときに圧排糸が全周確認できることがポイントの一つです。

 

また模型の作成にあたって必要のない部位は寒天にてブロックアウトを行います。

 

圧排糸を挿入してからは大体5分以上くらいはカルテを書いたりして、そのままの状態で待ちます。

 

今回のケースの様に適合の良いプロビジョナルを作っている場合だったり、ポンティック部の印象が必要なケースの場合は、プロビジョナルを戻し、噛んでもらった状態で時間を置きます。

 

印象材の種類について

現在販売されている印象材は、大半が求められる具備条件をクリアしていると思っているので、何を使ってもいいと思います。

 

印象材を中心にして、下図の様な関係が良いことが求められると思います。

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これらは超親水性という最近の大抵の付加型シリコーン印象材が備えている特徴があるので、支台歯の細かい隙間に入り込んで歯根形態を再現してくれますし、石膏注入時の馴染みなんかも問題ないレベルかと思います。

 

一応メーカーの公表値として接触角とかが出されていて、それぞれ角度が違うんですが、実際の再現性にはそこまで影響がないと思ってます。

 

それよりも確実な歯肉圧排、個人トレーの作成、アンダーカットの除去など、その辺の操作をきちんと行う方が影響が大きいと思います。

 

ちなみに勤務先では、天然歯の場合、白水から出てるパナジルのトレーソフトとX-ライトの組み合わせで採ることが多いです。

 

次点で3mのインプリントです。こっちのほうが、深い縁下形成をした時など、印象材が引きちぎれて支台歯の方に残るとかっていうのが少ない気はします。

 

トレーボディと、ライトボディは同一メーカーのものを使用します。

 

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ポンティック部の伝達 (ラボコミュニケーション)について

色調の伝達や、形態の伝達はそれぞれの医院でやり方があると思うので特に言及はしませんが、今回非常に頭を悩ませたのが、ポンティック部の形態の伝達です。

 

今回の圧排糸を入れた写真と、前回あげたプロビ除去直後の写真では乳頭の立ち方が全然違うことがわかると思います。

振り返り
Case.①-4【特にポンティックサイト】プロビジョナルレストレーションの調整について

続きを見る

 

インプラントやってる方は感覚的にわかると思いますが、歯肉はプロビによって整形されているので、外した瞬間から変形が始まっていきます。

 

なので、普通に印象を採ったのみだとプロビで煮詰めた形態が技工士さんにうまく伝わりません。

 

後述しますが、ここの形態をいかに正確に伝えるかがものすごく重要と考えていたので、どんな方法があるか調べてみました。

 

模型にした後に削る:ポスト・インプレッション・テクニック

以前にも出させてもらった小濵先生の前歯部審美修復 天然歯編に掲載されていた方法です。

 

最終印象の後に後戻りした分を予想し、技工士さんが模型を削ってポンティック部の形態を作っていく方法です。

 

さらにフレームトライの際に不足があった場合はパターンレジンなどによって不足分を記録し、陶材を盛ってもらうことになります。

 

自分のプロビジョナルの形態が反映されないこと、基底面が陶材になるのが嫌だったのでこの方法は却下でした。

 

プロビジョナルレストレーションを用いた方法

Dylina TJ. Contour determination for ovate pontics. J Prosthet Dent 1999; 82:136–142. より出典

 

よりプロビジョナルの形態を再現させるための方法として、既存のプロビジョナルを使用した方法があります。

 

この様に基底面形態をシリコンにて印象し、そのインデックスを技工士さんに送って形態の参考にしてもらう方法です。

 

木林先生の本の中では木林博之先生なんかはもっと手の込んだことをされていますが、手技が多岐にわたり、自分の技術だとどっかでエラーを拾いそうだったので断念しました。

 

上記のインデックスを使用する方法は完璧ではないですが、簡便であり、要所を抑えているかなと思います。

 

個人トレーを応用した方法

 

これは、取り込み印象をして、それを模型におこし、ポンティック部分を選択的に加圧する部位を付与。復位が確認できる様に覗き窓を設置した個人トレーで印象を採るって方法。

 

これなんかも復位の位置をちょっとでも間違えた瞬間に全てが終わります。

 

他にもリスクがあって、下段中央の印象面の写真が典型的なんですけど、圧排糸を除去し、印象材を流した後に加圧を行うので、隣接部のポンティックに押される部分は、印象材が流出する、もしくはかなり少なくなって、印象除去時に縁下部分のシリコンがちぎれちゃうっていうことが生じてます。(下写真の青矢印のところ)

 

印象材多分縁下に残ってるはず。。。

 

よってこの方法も臨床応用するにはリスクが高いかなと思ってます。

 

【プロビジョナルをそのまま送付】自分が選択した方法とこれから。

ラボへの正確な伝え方ということでいくつか見ていったんですが、自分が選択した方法は至ってシンプルです。

 

煮詰めたプロビジョナルをそのままラボに送りました。

 

患者さんにはトライまでの間少し審美的に劣るプロビジョナルをつけさせてもらうことになりましたが、一番確実な方法かと思い、その方法を選択しました。

 

調べた中ではなかったんですけど、今後十分可能だなと思う方法はIOSを使ってプロビジョナルの形態と模型を重ね合わせすることです。

 

ジルコニアフレームを使っているので、この作業を組み込むことは可能なはずです。

 

お付き合いしているラボでは対応いただけなかったので、めちゃくちゃアナログな手法で行いました。

 

他にもいろいろな手法があると思うので、もしお詳しい先生がいらっしゃったら、ぜひご教授いただきたいです。

 

次回はセットに関する部分を見ていきます。

 

次はこちら
ジルコニアブリッジ
Case①-6 最終補綴物のセットについて。セメント、術後管理

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  • この記事を書いた人

Dr.H

岩手県花巻市の成田歯科医院で歯科医師をしてます。論文をベースに臨床に役立つ情報を紹介するブログ。一般の患者さんの悩みに答えられるような内容もあげていきます。もしこんな話題を扱って欲しいなどの要望があれば問い合わせよりご連絡ください。

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