根管治療において、1回法でも2回法でも、仮封をする必要性が出てきます。
根管内細菌の数をいかに少なくするかが勝負の根管治療において、ラバーダムやマイクロスコープなどと同様に仮封も重要です。
今回はその仮封に関する復習と、ちょっとした工夫を紹介します。
【仮封材の一般論】仮封材に求められる用件とは。
仮封材を選ぶ上で、特に重要なのは封鎖性と、機械的強度であると考えています。
キャビトンに代表される水硬性セメントは辺縁封鎖性は高いものの、機械的強度が低いことから、咬合、ブラッシングなどによって、厚みが薄くなり感染のリスクが上がります。
その弱点を補うのがグラスアイオノマー系やコンポジット系の仮封材になります。
しかしながら、これらを単一で詰めてしまうと、除去の困難さや除去時に歯質を切削するリスクなどのデメリットが出てきます。
そこでコストなども踏まえ、総合的に良いと考えられているのが、水硬性セメント(4mm)+ベースセメントという組み合わせになります。
この二つを組み合わせることで、双方のメリットを生かし、デメリットを補うことができます。
ちなみにプロビジョナルが入っている場合には表層の機械的強度は、プロビによって守られているので、水硬性セメントだけで十分だと考えます。
以下の報告によると、一般歯科医院において二重仮封を行っているのは0.8%以下のようなので、仮封に関する知識は全然広まっていないのかもしれません。
【スペーサーの一般論】綿球はだめ、PTFEを使おう
仮封材が根管内に入り込まないよう、髄腔内にスペーサーとして綿球を設置することが多いと思います。
しかし、この綿球の線維が仮封材と歯質の界面についてしまうと、わずか数本であってもその線維を通して根管内に細菌が侵入することが報告されています。
この論文を知って考えたのが、PTFEの応用です。
【PTFEの特徴】化学的安定性と、良好な操作性。
歯科用としてはモリムラから出されているTDVアイソテープというものがあります。
PTFEは比較的不活性であるため、耐薬品性を持っており、静摩擦係数と動摩擦係数が低く非常に除去がしやすいという特徴を持っています。
インプラントをされている先生はアクセスホールの部分に応用されている方も多いと思います。
【コットン VS PTFE】どちらの方がスペーサーとして優れているか。
この応用を思いついた時は講習会などでも聞いたことなかったし、オリジナルテクニックだーなんて思っていましたが、色々論文も出ているんですね。。
以下のシステマティックレビューでは全ての適格基準に合致する研究がなかったものの、参照されたほとんどの論文において、
PTFEの方が汚染を防げる。という結果になりました。
【実際の症例】隔壁で咬ませているケースです。
【まとめ】IDSの根治版、IPDSが出てきた。
ということで、スペーサーにPTFE、仮封材にキャビトン+GI系セメントというのが仮封のレシピになります。
今回は隔壁に関して触れませんでしたが、本ケースの隔壁と内部構造をあのようにしている1つの理由は髄腔部分の象牙質に対する接着です。
IDSは広く知られるようになりましたが、根管治療時の象牙質汚染はあまり考えられていませんでした。
最近の勉強会で、この根管治療前のIDS(IPDS:Immediate Pre-Endodontic Dentin Sealing )を知ったので、それ以来、根管治療前にIDSを行うようになりました。
この件についてもまた取り上げられればと思います。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございます。