最近の研究でどうやら歯周病原菌がアルツハイマー型の認知症に高い確率で関与してるぞ。ということがわかってきたので、その話をしたいと思います。
そもそもアルツハイマー型の認知症とは?
認知症は大きく分けると3つの型(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症)に分けられます。
このうち有病率が最も高いのが、アルツハイマー型認知症になります。
厚生労働省老健局の ”認知症施策の総合的な推進について”内に引用されている
「都市部における認知症有病率と認知症の 生活機能障害への対応」(H25.5報告)によると
認知症のうち実に67.6%がアルツハイマー型認知症であったことが報告されています。
【アミロイドが蓄積】アルツハイマー型認知症の発症機序
脳は加齢などの原因により、少しずつ萎縮し、認知機能が低下していきます。
それに加え、アミロイドと言うタンパク質の一種が脳に蓄積されていきます。
このアミロイドは通常の場合、脳内のゴミとして排出されるのですが、加齢に加え、何かしらの異常で脳内に蓄積されていきます。
この蓄積により大きなタンパク質になると排出が困難になってしまいます。
これが脳細胞に対しダメージを与え、認知症の症状を悪化させると言われています。
【歯周病原菌が脳内アミロイド量を増やす】新たな研究でわかったこと
紹介する論文は九州大学が出した、2020年の論文です。
Redcomplexっていう歯周病の中でもすごい悪さをする菌群がいます。
その中のPorphyromonas gingivalis (P.g菌)が今回関連があるとされる菌です。
これをマウスモデルに直接感染させ、非感染のマウスとの比較を行いました。
すると、特異的なレセプターの発現などから、P.g菌感染ラットのアミロイドβの脳内流入量が、非感染のものと比較して優位に増加した。
という結果になり、歯周病の進行が、アルツハイマー型認知症の進行に関与している可能性が高いことを示しました。
したがって、AD患者における歯周炎、脳内皮細胞におけるRAGE発現、脳内Aβ蓄積の正の関連性を調べることは興味深い。
(AD:Alzheimer's disease アルツハイマー型認知症 RAGE:特異的レセプター Aβ:アミロイドβ)
と結んでいます。
【硬組織が体外に出ちゃっているのは歯だけ】歯が持つ特殊性と防御機構
歯周病の危なさを一言で言うと、細菌が容易に体内に入る可能性があるということです。
人体の中で唯一硬組織が体外に出ているのが歯になります。この異常性をしっかり理解しないといけません。
歯以外は上皮によって覆われているので細菌が侵入する経路がないんです。体内は基本的に無菌です。
なので、歯の周りには体内に細菌が侵入してこないような警備体制が厳重に引かれています。歯肉溝からは常に組織液が出ていて、それによって運ばれてきた免疫細胞たちが敵をやっつけてくれます。
ただこれが敵の数が増えすぎたり、歯石っていう敵の中継基地を作られてしまうと情勢はどんどん細菌軍に傾いていきます。
人体に菌そのものが侵入してくることはどうしても避けたいので、我々の司令官は勇気ある撤退を選択し、自ら手で歯を支える骨を溶かす指示を出し、歯を捨て、上皮というバリアをして外界との経路を遮断することで、細菌の侵入を防ぐのです。この繰り返しで無歯顎患者さんの誕生です。
虫歯は細菌が出した酸によって歯が溶けていきますが、歯周病は細菌に攻められた結果として、自分の体自身が骨を溶かしています。菌によって直接的に溶かされるわけではないのです。
【結論】だから歯医者さんには定期的に通いましょう。
あまり恐怖を煽るようなことを言ってはいけないですが、
現時点で他にも脳梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎、動脈硬化、心筋梗塞、菌血症などの病気と歯周病の関連が言及されています。
歯医者に通えば上記のような病気が防げる。という訳では決してありません。
ただそのリスクを回避することはできます。
失ってから、発症してからでは遅いのです。
この記事を読んで少しでも未然に防ごうと言う意識が芽生えてくれると嬉しいです。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます。